50本の筮竹を使う東洋最古の占い「易経」
「易経」は古代中国における儒教の経典のひとつであり、易占いの解説書です。
書物としての歴史は大変古く、エジプトのパピルス文書と肩を並べるほどの東洋最古の書物です。
この「易経」で解説されている易占いとは、50本の筮竹を使う占い方法です。
占い師が、細い竹の棒の束を使って鑑定していることがありますが、あの細い竹の棒の束が筮竹と呼ばれるものです。
易占いは、一番初めは、陰と陽の2つしかありませんでしたが、そこからさらに、自然や人間を支配する8個の大切な要素「光、沢、火、雷、風、水、山、地」を取り入れる方法が生まれました。
そのそれぞれの要素に言葉が当てはめられ、いわゆる「八卦」が誕生したのです。
さらに、八卦と八卦をかけ合わせ、64個の卦を導き出しました。それを使ったものが易と呼ばれる占い方法です。
易の歴史
その昔、3千年以上昔の古代中国では、亀の甲羅を焼いてできるひびを見て未来を予測するという占いをしていました。
その後、周の時代に入り、亀の甲羅が手に入りにくくなったため、草木の茎を使う占い方法に変わっていきました。
そこで、伝説の皇帝伏羲が自然をモチーフにした八卦を考案したと言われています。
日本に易が伝わったのは奈良飛鳥時代の頃で、遣隋使が易経を中国から持ち帰ったのがきっかけだと言われています。
易の構成
易は全部で六十四の卦で構成されています。
「卦」というのはある時での様相をあらわし、人間が人生で遭遇するであろう、あらゆる時を示しています。
易の特徴は、陰陽六本の爻で示された卦の記号があり、そのかたちから読みとった時の様相が字で記されていることです。
太極から陰陽二つにわかれ、次に四つ象(老陽・少陽・老陰・少陰)にわかれ、さらに分裂して三本の爻からなる八種類の象(八卦)になります。
「当たるも八卦、当たらぬも八卦」と耳にしたことがあるでしょう。
古代の原型的な易占いはこの八卦で判断していました。
八卦には、「乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤」(けん・だ・り・しん・そん・かん・ごん・こん)の名まえがついています。
これらの性質を自然現象にたとえると、「天・沢・火・雷・風・水・山・地」(てん・たく・か・らい・ふう・すい・さん・ち)になります。
それぞれが象徴する属性、性質があります。
易占いでは、この属性を参考に時・処・位を読みとっていきます。
あらゆる時を示す六十四卦
しかし、八卦だけでは、時の詳細をあらわすには大まか過ぎますので、八卦太極図をより発展させて、六十四卦にしました。
一つの卦は、三本の爻の八卦を上下二つに重ねた、陰陽の六本の爻で成り立っています。
この記号を卦のかたちという意味で「卦象」といいます。
卦辞はある時の全体像をあらわし、爻辞は六本各爻について記し、変遷を説いています。
八卦の属性やかたちから六十四卦にはそれぞれ、全体的な時の様相を示す名称がついています。
六十四卦早見表は、縦の八卦と横の八卦の組み合わせでみます。
たとえば、自然現象からあらわす時を読みとれるものもあります。
山(艮)と天(乾)の山天大畜の卦は、「山の中に健やかな天の気を蓄えるような、大いなる蓄積の時」をあらわしています。
また、火風鼎の卦は、卦象が鼎(食べ物を煮るための足つきの鍋)のかたちをしていることから名づけています。
乾(天)と兌(沢)は、天沢履という卦です。
履とは「踏む」の意。「虎の尾を踏む」のことわざの出典の卦です。
上下が同じ八卦である、乾(天)と乾は八卦の名称と自然現象を組み合わせ、乾為天という卦になります。
同じく坤(地)と坤は坤為地といいます。
易占いの方法
易占い周易でも用いる「六十四卦」と、占う年月日を組み合わせて占断する卜術です。
サイコロ、コイン、筮竹などを用いて「六十四卦」を立て、各卦を構成する六つの爻に定まった十二支を割り振り、これらの十二支と占いを立てた時の十二支の陰陽五行による関係を基に判断するため、別名「五行易」とも呼ばれています。
占いたい事柄に対する吉・凶がはっきり出る上に、その結果の出る時期と当事者にとって有利な対処策まで答えられる占術です。
易占いの的中率
易占いは実力がある占い師であればかなりの確率で当てることができます。
しかし、的中率を高めるとともに、以下のように注意すべき点があります。
・占う事柄をできるだけ具体的に絞ること
具体的でないことを易で占っても答えが出ません。
たとえば「私の人生はどうですか」と占ったとしても、何も出ません。
「私の人生はどうですか」では、あまりにも対象が過ぎます。
占う事柄を具体的に細かく、ピンポイントに的を絞ります。
占う対象を絞るほどに当たりやすくなります。
四柱推命などの命術であれば大まかな人生の流れを占えますが、易の場合は、ピンポイントに的を絞ることが当てるために不可欠です。
・同じことを2度占ってはならない
「初筮は告ぐ、再三すれば涜る。涜るれば告げず。」
という言葉が山水蒙の卦にあります。
答えが気に入らないからといって再度同じことを占ってはならないとされています。
自分に都合のいい答えを知りたい。
そのためだったら自分さえも騙すという気持がいけないというのです。
同じことを2度占ってはならないと言っても、しばらく間を置いて占うのであればかまいません。
ただ、同じ日に同じことを占ってはいけません。
同じことを占いたいのであれば、1週間ぐらいは間を置いた方がいいでしょう。
・不正なことを占ってはならない
悪事についてとか、他人に危害を及ぼすようなこと、私欲に関することを占ってはいけません。
たとえば今、育児が大変だから、放棄してもいいかどうか、邪魔者に危害を加えてもいいかどうか、などということを占ってはいけません。
・死に関しては占ってはならない
自分や他人の死に関しても占ってはいけません。
・次の5つに該当する場合は占いをしてはいけないとされています。
次のような状態で占ったとしても、精神集中ができないからです。
- 酒を飲んだり、酔ったりしている時に占ってはいけません。酒を飲んで占った場合は、まず当たりません。集中力が低いからです。
- 房事の後に占ってはいけません。ぼわんとしているからです。
- 喧嘩した後に占ってはいけません。頭に血が上っていて集中できないからです。
- 人込みの中で占ってはいけません。精神集中ができないからというのが、その理由です。ただし、プロの占い師は人ごみの中で集中できるように訓練されているので大丈夫である場合が多いです。
- 苦悶、煩悶を抱いている時に占ってはいけません。パニックになっている状況や苦悶のある時は集中できないからです。